瀬戸大将(せとたいしょう)
<

妖火 瀬戸大将(せとたいしょう) 妖火

 瀬戸大将は瀬戸物の付喪神である。しかし瀬戸物で有名な愛知県瀬戸市とは関係なく、畿内以東で云う陶磁器の総称から取ったと考えた方が無難であろう。因みに関西以西では佐賀県唐津市が特産地であることから唐津物という呼び方を使う。

 鳥山石燕は瀬戸大将を表すに当たり、あの『三国志』を引用している。

ほこをよこたへて詩を賦せし曹孟徳に
 からつやきのからきめ見せし燗鍋の寿亭侯にや。
  蜀江のにしき手を着たりと、夢のうちにおもひぬ。


 『三国志演義(百二十回本) 第五十回「孔明、智をもって華容の道を閉じ、関羽、義によって曹操を放つ」』での、赤壁の戦いに破れて敗送する魏の曹操(孟徳)が、蜀の関羽(寿亭侯)の義理堅い性格をついて窮地を切り抜けると云う有名な場面を転用し、瀬戸物=関羽、唐津物=曹操として描いている。瀬戸と唐津の焼物合戦の趣だろうが、赤壁の戦いは魏蜀ではなく魏呉の戦いであったから、これは果たして良い喩えであろうか?

 そもそも蜀の軍師:諸葛亮は三国鼎立を目論んでおり、それには二大強国であった魏呉の戦力を効果的に削いでおく必要があった。しかし曹操を捕らえてしまうとそのバランスが崩れると考えていたらしく、以前に魏の降将と成り曹操の世話になった関羽の義理を、曹操を見逃すことで果たさせておこうと、敗送経路に関羽を埋伏させていた節も見られる。

 閑話休題。であるから、この徳利頭に燗鍋を背負った関羽は、蜀の成都に産したという蜀錦模様の鎧(瀬戸物)を着ているのである。その足元には壊れた陶磁器の破片が散らばっているが、こちらは唐津物と云うことなのであろうか? しかし何故、石燕は三国志を、関羽を引き合いに出したのか、全く想像がつかない。

 平成9年12月28日に放送された『ゲゲゲの鬼太郎 第101話「言霊使いの罠(京極夏彦脚本)」』で瀬戸大将が活躍。但し付喪神ではなく、陰陽師が生命を吹き込んだ式神としての登場であった。

(文責:カメヤマ)

・ 参考文献:百器徒然袋
・ 属性:器物
・ 出現地区:
・ 小説など:
・ その他キーワード:

2000.7.21 22:44